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境界の種類

境界には様々な種類が存在します。これらは、所有権界、筆界、占有界、地上権界、借地権界、永小作権界、公物管理界、行政界などと呼ばれます。

これらの境界はすべて同じ位置に存在するわけではなく、特に紛争のある境界では、別の位置に存在することが多いです。

この事実を理解せずに境界についての調査等を行うと混乱を招く可能性があります。

土地と土地との境界には、所有権界と筆界が存在します。これらは原則的に一致すべきですが、一方だけが存在することや、異なる位置に存在することもあります。

所有権界が私的存在で、民事実体法理に由来します。一方、筆界は公的存在で、不動産登記に由来します。

さらに、土地所有権の一部やそれを超える範囲にも、占有界、地上権界、借地権界、永小作権界といった私的境界が存在します。これらもすべて民事実体法理に由来します。

所有権界は、土地の所有権が及ぶ範囲のうち、その縁(へり)を指します。

所有権の客体としての土地とその隣地との境界に所有権界と筆界という2種類が存在する理由を理解するためには、境界の成り立ちについて歴史的に見ていく必要があります。

所有権界

1.所有権界の歴史的成立過程

土地の境界が成立したのは、明治初年でした。

明治維新政府は、町地や農地について旧幕藩体制時代から「近代的所有権に最も近い土地支配権」を有していた者に、原則として所有権を付与し、同時に土地の分割は市民の自由としました。

旧幕藩体制の下では、現在の土地所有権と同一内容の排他的、絶対的な土地支配権は存在していなかったことから、観念的には、土地所有権が法律で認められたこの時点で、

近代的土地所有権と土地所有権の境すなわち所有権界(私的境界)が形成されたといえます。

2.所有権界についての民法の規定と実務

(1)境界確認・障壁築造等のためにする隣地の使用請求権

障壁・建物の築造・修繕のためにする隣地の使用

土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができます。

ただし、その住家に立ち入ることは、隣人の承諾がなければできません。

その前提としての境界を明らかにするための調査・測量についても合理的な範囲で隣地使用請求権が認められます。

(2)境界標の設置権

ア.境界標の設置権、設置費用

土地所有者は、隣地所有者と共同の費用で境界標を設置することができます。

設置、保存の費用は両者が折半し、測量の費用は相隣地の広さに応じて分担します。

そのため、境界標に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定されます。

実際には、境界標を必要とする一方当事者が隣地所有者の承諾を得て単独で設置する例が多いです。

相隣地所有者が他方の承諾を経ずに境界石その他の境界標を設置した場合には、その境界標の設置は、そのこと自体が相隣地所有者の所有権を妨害しているものと認められ、土地所有権に基づく妨害排除請求の対象となります。

それを避けるために、一方の土地所有者が単独で境界標を設置する場合、設置者の所有地内にいわゆる逃げ杭ないし方向杭を設置していることも少なくないようです。

イ.境界標の設置権請求権

隣地所有者に対し、境界線上に杭や鋲などの境界標を設置せよとの請求権があるのでしょうか。

相隣者が1対1の割合の費用を負担して境界線上にコンクリート杭の境界標を設置して、ブロック塀を築造せよとの判例が示されています。

(3)囲障設置権

ア.囲障の設置請求権

所有者の異なる2棟の建物があって、その間に空き地があれば、各建物の所有者は、他の建物所有者と共同の費用で両地の所有権界に塀や垣根などの囲障を設けることができます。

囲障の種類・構造について当事者の協議が調わない時は、高さ2mの板塀又は竹垣類とします。設置、保存の費用は折半です。

(4)境界標・囲障等の所有関係

土地所有権の境界線上に設置された境界標・囲障・溝等は相隣地所有者の共有と推定されます。

共有障壁の高さを増そうとする時、一方の土地所有者は相手所有者の同意がなくても、自分の費用と責任において増設でき、増設部分の所有者は増設者に帰属します。

それにより隣人が損害を受けた時は、増設者は賞金の支払い義務を負います。

(5)枝・根の除去

土地所有権の境界線を超えている枝は、竹木の所有者に切らせ、根は自ら切ることができます。

(6)境界付近の工作物の築造

建物は、別段の慣習がある場合を除き、所有権界から50cm以上離さなければなりません。

もっとも、建築着手時から1年経過又は建物完成後は差止めを求めることができず、損害賠償を求め得るのみです。

(7)観望制限

所有権界から1m未満の距離に他人の宅地を見通すことのできる窓、縁側、ベランダを設ける場合には、別段の慣習がある場合を除き、目隠しをつけなければなりません。

プライバシー保護を目的としている規定であるから、工場、倉庫、事務所の敷地等を見通せても、同規定の適用はありません。

(8)① 井戸・用水だめ・下水だめ・肥料だめを掘るには、所有権界から2m以上の距離を保たなくてはなりません。

② 池・穴藏・し尿だめ・肥料だめを掘るには、所有権界から1m以上の距離を保たなくてはなりません。

③ 導水管を埋め又は溝、堀を掘るには、所有権界から1mを超えることを要しないが、所有権界からその深さの2分の1以上の距離を保たなければなりません。

地上権、借地権、永小作権と相隣接する土地の所有権、地上権とがぶつかり合う場合については、所有権界同士のぶつかり合いと同じく、私権(相隣関係)の調整場面であるから、地上権界については、

所有権界についての調整規定が明文で準用されます。

 

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